2020.9.3

あの子の2回目の月命日を迎えた。
寂しさは少しも質量を変えることなく、体のなかのそこかしこに根付いている。
あの子の動画や写真を見ていると、こんなに素晴らしいいきものと暮らしていたなんて、ほとんど奇跡みたいだったなと思う。
あの子は奇跡で、わたしにはもう、そういうたぐいの出会いが訪れることは、二度とない。
きみはそちらで元気にやっているだろうか。猫又として生まれる準備のまっただ中かもしれない。
人間は暑さにまいっているけれどどうにか生きています。それから、ほんの少しお刺身が苦手になってきてしまいました。
きみの大好きなご馳走だったから、贅沢者と怒られてしまいそうだ。
きみが家中どこにでもついてこようとするので、わたしには少しだけ隙間を残してドアを閉める癖がついている。
その気になれば自分で開けられるくせに、「開けておくれ」と鳴いて人間に開けさせるのが好きな猫だった。
いくつものドアの隙間を縫うようにしてわたしのあとをついてくる、きみの姿が好きだった。
わたしが通ったあと少しだけ開いたままのドアを、家族がバタンと閉じる音を聞くたびに、勝手に悲しくなってしまう。
それが正しいことだとわかっているのに、だからなのか、たまらなく苦しくなる。
きみがいない秋も冬も、わたしは知らない。季節の移り変わりが今からおそろしくてたまらない。
寒い夜のベッドにいとしいぬくもりがないことを想像しては、何かの間違いであってほしいと、いまだにそんなことばかりを願ってしまう。
最後に触れた毛並みの手ざわり、こちらを見つめる瞳、さまざまな宝石のような記憶のすべてが、わたしを置き去りにしたまま、だんだんと思い出になっていこうとしている。