2020.8.3

あの子がいなくなってから、1ヶ月が経った。
月命日なので、花束を買った。
3日前のようにも、3年前のようにも感じる。
ほんのついさっきまでそこにいて、足元からいつもどおりの澄まし顔を覗かせて出てくる気がする。
あの子のいない部屋にいると、無理やり引き伸ばして薄まった時間のなかに長いこと取り残されたような気分になる。
その両極端でめちゃくちゃになった時間感覚が、つねに音もなくのしかかってくる。そんな1ヶ月だった。
夏、きみはすこしでも涼しいところにいたがった。
エアコンの効いたわたしの部屋で、まるで隠れんぼをするみたいに眠るのが好きだった。ベッドの上、収納の引き出しの中、エアコンの真下の棚の上。
部屋に帰ってきたわたしの日課は、まずきみを見つけること。
いまだに、あの子の居場所を目線で探してしまう癖がなおらない。
どんなに探しても見つからなくてつらくなるだけなのに、一生なおらないでいてほしいとも思う。
あの子の眠る庭の片隅に、花を供える。
すぐそばの隣の敷地の木々で蝉がえんえんと鳴いている。
やかましいと片目を開けて睨んでくる顔を思い出す。
静かに眠らせてあげられなくてごめん。夏の間だけ、どうか許してね。
しぶしぶというふうに不機嫌にしっぽをひとつ振る姿を、思い浮かべる。
きみのいない時間が、人生にすこしずつ増えてゆく。